目次
介護報酬改定の情報は、一次資料から読む派の室長てつです。
介護報酬改定の情報は、ニュースサイトや解説ブログを待たなくても手に入ります。社会保障審議会介護給付費分科会の資料は、開催の当日から厚生労働省のサイトで公開されているからです。
ただ、この記事で伝えたいのは「早く知る方法」ではありません。解説記事だけを読んでいるかぎり、自分の施設にとって何が問題なのかは分からないまま。資料を自分の関心で読み、自施設の数字と突き合わせる。そこまでをAIに手伝わせる手順をまとめます。
この記事で使うもの。
- 厚生労働省の介護給付費分科会のページ(ブックマーク1つ)
- AI(エージェント型AI、または Gemini Notebook(旧NotebookLM)。Claude や ChatGPT でも可)
- 自施設の数字(加算の算定状況、利用者数など。用意するものは後述)
私は通所リハビリの管理職です。前回の記事を書くときに分科会の資料を通しで読み、解説記事には載っていなかった数字に行き当たりました。そのときのやり方を、手順として残します。
先に漫画でざっと流れを見たい方は、まんが『全部、読んだの?』をどうぞ。
介護給付費分科会とは|介護報酬改定の中身が話し合われる場
介護給付費分科会は、厚生労働省の社会保障審議会に置かれた分科会です。介護報酬の改定や運営基準について、厚生労働大臣の諮問を受けて審議します。委員は学識経験者、事業者団体、保険者、自治体、利用者や家族の立場の団体など。
介護報酬改定は原則3年に1度。改定の前年には、サービスごとの現状と課題、論点が順番に議題に上がります。いまは令和9年度改定に向けた審議の最中で、2026年9月は16日までに4回開かれました。
改定のニュースや解説記事の元ネタは、ほぼすべてここの資料です。つまり、元ネタは誰でも読める場所に置いてあります。
分科会の資料を自分で読む価値は「早さ」ではない
資料は開催当日に公開されます。解説記事より早いのは事実です。でも、本題はそこではありません。
- 解説記事は、書き手の関心で切り取られている
- 伝えてくれるのは「何が話されたか」。「自分の施設にとって何を意味するか」は書かれない
- 資料を通しで読めば、自分の関心で拾える。自施設の数字を横に置けば、判断の材料になる
解説記事が悪いわけではありません。全国の読者に向けて要点を伝えるのが役目なので、個別の事業所の事情までは拾えない。そこを埋めるのは、読む側の仕事です。
実例:同じ資料から、解説記事に載っていない話が出てきた
実際にあった話をします。
通所リハビリテーション計画書の目標について調べていたとき、まず専門メディアの解説を読みました。第258回の分科会を取り上げた記事で、「計画書の目標は運動機能が中心、ADL・IADLの改善を目標にしているのは2〜3割」と正確に報じていました。
次に、厚生労働省のPDFそのものを、AIと一緒に通しで読みました。すると同じ資料の離れたページに、利用開始から6か月後にIADLが改善した人は約36%というデータが載っていました。

IADLの改善を目標にしているのは約20%。実際に改善したのは約36%。この逆転は、2つのページを並べないと出てきません。私が探した範囲では、この2つを結びつけた解説記事は見つかりませんでした。
解説記事が間違っていたのではなく、私の関心(計画書の目標が現場の成果を拾えているか)が、書き手の関心の外にあっただけです。この発見から書いたのがリハビリテーション計画書の目標を活動・参加まで広げる書き方です。
介護給付費分科会の資料はどこにある?最新回の探し方
資料の在り処は1か所です。
- 厚生労働省の社会保障審議会(介護給付費分科会)のページを開き、ブックマークする
- ページ内の「直近の開催内容」のリンクを開く
- 見たい回の「資料」を開き、サービス別のPDFを選ぶ
2つ目の手順でつまずきやすいです。2026年9月時点では、最初のページの一覧に載っているのは第240回(2024年3月)まで。それより新しい回は「直近の開催内容(第241回〜)」という別ページにまとまっています。最初の一覧だけ見て「更新が止まっている」と勘違いしないでください。
一覧には回ごとに「議事録」「資料」「開催案内」が並びます。議事録は後日の公開ですが、資料は開催当日に出ます。通所リハビリなら、議題に「通所リハビリテーション」が入っている回の、サービス名がついたPDFが目当てです。
AIに調べ物をさせるときの手順と、答えを鵜呑みにしないための確認のやり方は、制度リサーチは「検算」が9割に詳しく書きました。ここから先は、その続きの話です。1回の調べ物で終わらせず、積み重ねて自施設の判断に使います。
1回で終わらせない。資料を積み重ねてAIに読ませる
分科会は月に何度も開かれます。サービス別の資料は1本で数十ページ。1回ずつ要約させて終わりにすると、「この論点は前にも出ていたか」「表現が変わったか」という、回をまたいだ問いが立てられません。
以前の私なら、Gemini Notebookで改定サイクル用のノートブックを1つ作っていたと思います。いまはエージェント型AIに任せています。
エージェント型AIに、資料フォルダごと読ませる
エージェント型AIは、パソコンの中のフォルダを見て、ファイルを読み、結果をファイルに書き残せるAIです。私が使っているのは Claude Code。前の節の実例でPDFを読ませたのも、これです。どんな道具かはヒヤリハット報告書をClaude Codeでアプリ化した記録で説明しています。
やることは単純です。
- 改定サイクル用のフォルダを1つ作る
- 分科会のたびに、関係するサービスのPDFを回次が分かるファイル名で保存する
- AIに「このフォルダの資料を読んで、要点と論点をメモにまとめて」と頼む
- 次の回からは、前回までのメモと新しいPDFを合わせて読ませる
メモが残るので、AIは前回までの流れを踏まえて新しい資料を読めます。回を重ねるほど、聞ける問いが増えていく。改定サイクルを通した蓄積は、私も始めたばかりです。
はじめてなら、Gemini Notebookで同じことができる
エージェント型AIは有料で、最初のハードルが少し高い道具です。はじめての方は、無料で使えるGemini Notebookで同じことができます。
ノートブックを1つ作り、分科会のたびにPDFをソースとして足していくだけ。前回改定(令和6年度)のときの資料も入れておくと、「何が変わったか」を聞けます。Gemini Notebookは回答に引用元を示すので、どの回のどの資料に書いてあったかも追いやすい。
どちらの道具でも、聞き方は同じです。
ここには、介護給付費分科会の資料を回ごとに入れています。
次の問いに、資料名と回次を必ず添えて答えてください。
1. 「(調べたい論点)」について、どの回で、どう述べられているか
2. 前回改定(令和6年度)の資料と比べて、表現が変わった点はあるか
3. 資料に書かれていないことは「書かれていない」と答える
推測で補わないでください。
自施設の数字を横に置く
全国平均だけ眺めていても、判断にはなりません。比べる相手が要ります。
- 加算の算定状況(算定しているもの、していないもの)
- 利用者数と、要介護度の分布
- LIFEのフィードバック票
- 職員の配置、資格、研修の修了状況(加算の要件に直結するもの)
どれも、請求ソフトや手元の管理表から出せるものです。きれいに整える必要はありません。箇条書きで十分です。
利用者さん個人が特定される情報は入れません。使うのは集計した数字だけです。
AIに全国の状況と自施設を突き合わせさせる
材料が2つ揃ったら、突き合わせます。
次のA・Bを突き合わせて、整理してください。
A:分科会資料に載っている全国の状況(貼り付け、または資料を指定)
B:当事業所の状況(貼り付け)
出してほしいもの
1. Bが全国平均から離れている項目(高い・低いの向きも)
2. 資料の「論点」に挙がっている加算のうち、当事業所が算定しているもの
3. 算定していないが、要件を満たせる可能性があるもの
4. 判断するのに足りない情報
条件
- Aに書かれていない数字を作らない
- 4を必ず出す。分からないことを埋めないでください
- 改定の結論を断定しない。「論点として挙がっている」までにとどめる
肝は4つ目です。AIは、足りない情報をそれらしく埋めて答えを整えることがあります。「判断に足りない情報」を必ず出させておけば、埋められた箇所に気づけます。
たとえば通所リハビリの資料には、生活行為向上リハビリテーション実施加算の算定率が1.6%だと載っています。私の事業所はこれを算定している側です。論点には「算定率が低い加算についてどのように考えるか」が挙がっている。全国の数字と自施設の状況を並べてはじめて、この論点が自分ごとになります。
自施設の情報をAIに入れるときの線引き
ここまで読んで、「自施設の数字をAIに入れていいのか」と引っかかった方もいると思います。
利用者さんや患者さんの情報については、医療・介護で生成AIを使うルール5つに線引きを整理しました。この節で扱うのは、その外側。事業者としての情報です。
先に、私の実態を書きます。
- 入れている:加算の算定状況、利用者数と要介護度の分布、職員の配置・資格・研修の修了状況
- 入れている:利用人数から自分で試算した介護報酬や単価の分析
- 入れていない:人件費率。避けているのではなく、私の立場では把握していない数字だからです
利用者さんの個人情報を除けば、いまのところ特別な線は引いていません。私の法人には、AIの利用について明文化されたルールがまだありません。内々で活用の話は出ていて、実態としてはAIがいろいろな作業を手伝っている。ルールが整う前に使い始めている、という事業所は少なくないと思います。
だからこそ、これから始める方には目安を置いておきます。公的なガイドラインがあるわけではなく、私の整理です。
| 情報の種類 | 例 | 目安 |
|---|---|---|
| すでに公開されている情報 | 介護サービス情報公表システムに載っている内容、加算の算定の有無、職員配置 | 入れてよい |
| 個人が特定されない集計値 | 利用者数、要介護度の分布、単位数からの試算 | 学習に使われない設定を確認して入れる |
| 非公開の実額 | 収支、給与、契約の条件 | 法人のルールを確認。迷うなら「全国平均より高い・低い」の相対値に変換する |
| 個人が特定される情報 | 利用者さん、職員の氏名や評価 | 入れない |
事業所名と法人名は外します。「当事業所」で通じます。
これは私の線引きです。法人に情報管理の規程がある場合は、そちらが優先します。入れる前に、使っているAIが入力内容を学習に使わない設定かどうかは確認してください。確認のしかたは学習に使われないAIの選び方にまとめています。
個人で試してから、職場のルールにしていく。その順番はチームでAIを使い始める3ステップに書いています。
出てきた答えの扱い|改定は予測できない
AIが出してくるのは、論点からの推測です。決定事項ではありません。
「算定率が低い加算は整理されるかもしれない」も推測です。分科会の論点は「どのように考えるか」という問いの形で出されていて、結論はまだどこにも書かれていません。
準備できるのは、加算を取りに行くことではなく体制のほうです。研修の修了者を置いておく。記録の型を作っておく。どちらに転んでも無駄にならない準備に絞ります。
- AIの答えに、資料名と回次がついているか。ついていない箇所は資料で確かめる
- 「決まった」と「論点に挙がった」を混ぜていないか
- 自施設で動くのは、どちらに転んでも無駄にならない準備か
まとめ
介護給付費分科会の資料を自分で読み、自施設に当てはめる流れを整理します。
- 改定の元ネタは分科会の資料。開催当日から誰でも読める
- 価値は早さではなく、自分の関心で読めること。解説記事に載らない話が拾える
- 最新回は「直近の開催内容」のページにある
- 1回で終わらせず、資料を貯めてAIに読ませる。エージェント型AIでもGemini Notebookでもいい
- 自施設の数字を横に置き、AIには「判断に足りない情報」を必ず出させる
まずは分科会のページをブックマークして、自分のサービスが議題になった回の資料を1本だけ開いてみてください。全部読まなくて構いません。「現状と課題」と「論点」のページだけでも、解説記事とは違うものが見えてきます。
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分科会の資料を通しで読んで見つけた、計画書の目標と実際の改善のズレの話です。
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