リハビリテーション計画書の目標|通所リハで活動・参加をAIで拾う
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リハビリテーション計画書の目標|通所リハで活動・参加をAIで拾う


目次
    1. ―1)リハビリテーション計画書の目標の記入例

通所リハで計画書の目標を書き続けてきた理学療法士、室長てつです。

リハビリテーション計画書の目標が、運動機能の向上に寄っている。そう指摘されたら、心当たりのある方は多いと思います。実際、国が令和9年度の介護報酬改定に向けた分科会で、通所リハビリテーション計画書の目標のうち約7割が運動機能で、ADLの改善は約30%、IADLの改善は約20%だというデータを示しました。

ただ、これは現場が手を抜いているという話ではありません。同じ資料に、利用開始から6か月後にIADLが改善した人は約36%いるとも書いてあります。生活の幅は広がっている。計画書がそこを指していないだけです。

この記事で使うもの。

  • 厚生労働省の分科会資料(第258回・資料3)
  • 手元のリハビリテーション計画書(氏名などは外したもの)
  • 録音できるもの(スマホのボイスメモ、PLAUD Note など)
  • Claude または ChatGPT

私は通所リハビリの管理職として、生活行為向上リハビリテーション実施加算を算定している事業所で働いています。全国の算定率は1.6%です。その立場から、目標を活動・参加まで広げる書き方を整理します。

なお、この記事は計画書を書く側に向けたものです。ご家族として説明を受ける立場で「計画書は毎月必要なのか」「署名はどうするのか」を調べている方には、別の情報のほうが役に立ちます。

先に漫画でざっと流れを見たい方は、まんが『目標、全員「歩行」?』をどうぞ。

国は「目標が運動機能に寄っている」と課題に挙げている

まず、数字から確認します。

厚生労働省は2026年6月15日の第258回社会保障審議会介護給付費分科会で、令和9年度介護報酬改定に向けた資料として「通所リハビリテーション」を提示しました。その中に、通所リハビリテーション計画書の目標を集計したページがあります。

計画書の目標にしている内容割合
運動機能(身体機能の維持・向上、歩行・移動能力の向上など)約70%
ADL(日常生活動作)の改善約30%
IADL(家事動作や役割などの手段的日常生活動作)の改善約20%

出典は第258回 社会保障審議会介護給付費分科会 資料3「通所リハビリテーション」です。元データは令和7年度老人保健健康増進等事業「通所・訪問リハビリテーションの適切な在り方についての調査研究事業」で、要支援175件、要介護515件の集計です。

この数字は資料の44ページと、49ページの「現状と課題」の両方に書かれています。一度だけ触れられた話ではなく、国が課題として繰り返し挙げている項目だということです。

介護保険のリハビリテーション計画書(様式2-2-1)は、LIFEへの提出対象でもあります。目標欄の中身は、事業所の外から見える情報になりました。

目標に書いていないことが、現場では起きている

ここからが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。

同じ資料には、利用者の状態がどう変わったかのデータも載っています。並べてみると、妙なことに気づきます。

通所リハ計画書の目標と、6か月後に実際に改善した割合の比較。ADLは目標30%に対し改善26%でほぼ一致するが、IADLは目標20%に対し改善36%と逆転している

ADLは、目標にしているのが約30%で、実際に6か月後に改善したのが約26%。ほぼ一致しています。

ところがIADLは、目標にしているのが約20%なのに、実際に6か月後に改善したのは約36%。目標に書いた割合より、実際に改善した割合のほうが多いという逆転が起きています。

買い物に行けるようになった。家事の一部を再開した。外出の回数が増えた。そういう変化が、計画書に目標として書かれていないところで起きているということです。

改善した人と、目標を達成した人は別の集計です。「目標に書いていないのに達成した」と厳密に言えるデータではありません。ただ、目標として掲げている割合と、実際に改善が確認された割合が逆転しているのは事実です。

現場の力が足りないのではない。計画書が、現場で起きていることを拾えていない。私はそう読みました。

ここまでの数字は、すべて1つのPDFに載っています

少し寄り道します。この記事の根拠にした数字は、全部さきほどの資料3、たった1つのPDFに入っています。

専門メディアもこの分科会を取り上げていて、「計画書の目標は運動機能中心、ADL・IADL改善は2〜3割」と正確に報じていました。要点としては何も間違っていません。

ただ、6か月後にIADLが改善したのは約36%という数字と結びつけた記事は、私が探した範囲では見つかりませんでした。どちらも同じ資料に載っているのに、離れたページにあるからです。

二次情報は「何が話されたか」を伝えてくれます。でも「自分の施設にとって何を意味するか」は、書き手の関心の外にあるものが落ちます。通しで読むかどうかで、拾えるものが変わる。

分科会の資料は誰でも見られます。

  1. 厚生労働省のサイトで「社会保障審議会(介護給付費分科会)」を開く
  2. 「直近の開催内容」を開き、一覧から見たい回を選ぶ
  3. 「資料」からサービス別のPDFを開く

議事録は後日公開ですが、資料は開催日から出ています。AIに要約させる前に、このURLだけ自分で押さえておく。それだけで、二次情報を待つ必要がなくなります。

資料を回ごとに貯めて、自施設の数字と突き合わせるところまでの手順は介護給付費分科会の資料を自分で読むにまとめました。

制度のリサーチでAIを使うときの手順と、答え合わせのやり方は制度リサーチは「検算」が9割にまとめています。

なぜ運動機能で止まるのか

では、なぜ目標が運動機能に寄るのか。

利用者さんに「どうなりたいですか」と聞くと、多くの方はこう答えます。

  • 足腰を元気にしたい
  • 転ばないようにしたい
  • 体力をつけたい

ここで止まります。これは利用者さんの問題ではありません。高齢で、できないことが増えていると、生活の具体像そのものが浮かびにくくなる。「何がしたいか」より先に「何ができないか」が来てしまうからです。

そして、この返事をそのまま受け取って目標を立てると、計画書は「身体機能の向上」になります。

これが、約7割という数字の正体だと私は考えています。誰かが手を抜いた結果ではなく、利用者さんが出してこないところを前提にして目標を設定してしまっている。質問が一つ足りないだけです。

「なんでそれがなると嬉しいの?」と一段掘る

足りない質問は、これです。

なんでそれがなると嬉しいんですか?

「足腰を元気にしたい」に対して、この一言を返す。それだけで、返ってくる言葉が変わります。

足腰を元気にしたいという答えに「なんでそれがなると嬉しいの?」と聞くと、買い物に行きたい、三軒先の友達の家に遊びに行きたい、旅行に行きたいという具体が出てくる階層図

  • 元気になって、買い物に行きたいんだよ
  • 三軒先の友達の家に、遊びに行きたいんだよ
  • 旅行に行きたいんだよ

ここで初めて、活動と参加が出てきます。買い物はIADL、友人宅の訪問と旅行は参加です。最初から本人の中にあったものが、聞かれていなかっただけです。

背景や思いをどう汲み取るか。出てこないところをフォローアップするのが、セラピストの役目だと思っています。

こちらが用意した答えに誘導しないでください。「買い物とか行きたくないですか?」と聞けば、たいてい「うん」と返ってきます。でもそれは本人の目標ではなくなります。開いた問いを投げて、本人の言葉が出てくるのを待つ。

一度で出てこないこともあります。その日は「特にないねえ」で終わって、次の週にふと「そういえば孫が」と話し始める。だから、聞けたときに残しておくことが要ります。

聞いた言葉を、その場で残す

ここでAIが効いてきます。ただし、目標を作らせるためではありません。聞いた言葉を落とさないためです。

私はいま、音声メモを自分の思考整理に使っています。トラブルへの対応を考えるとき、誰にどういう配慮が要るのか、何に注意して何をするのか。そういうことが立て込んでくると、頭の中にあることを声に出して残します。あくまで自分のためのメモです。

そのあとAIにドキュメントの形へ書き出してもらって、「これはこうだった」と並べ直す。そこからTODOの方向性を決めて、対応していく。この流れが手に馴染んでいます。

同じ型は、利用者さんから聞いた言葉を残すのにも使えます。新しい道具も新しい習慣も要りません。用途を一つ増やすだけです。

吹き込む場面は、こんなところです。

  1. 訓練が終わって、記録を書く前の数十秒
  2. リハビリテーション会議の直後(議事録とは別に、自分が気づいたこと)
  3. 一日の終わりに、まとめて

送迎の車中は勧めません。運転中の操作は危ないからです。

録音するのは利用者さんの声ではなく、自分の音声メモです。「Aさんが今日こう言っていた」を自分の口で残します。従来の手書きメモと同じ扱いで済むので、録音の同意という別のハードルを作らずに始められます。会議そのものを録るときは、議事録の目的で参加者に伝えてから行ってください。

録音から文字起こしまでの手順は介護の音声入力・文字起こしAIに、音声メモを成果物に変える型は学会メモは読み返さないにまとめています。

文字起こしができたら、AIに拾わせます。

次は、通所リハビリの担当者が、利用者さんとのやりとりの後に
自分で吹き込んだ音声メモの文字起こしです。
リハビリテーション計画書の「目的」「活動」「参加」の材料になりそうな
本人の希望を抜き出してください。

条件
- 本人が実際に口にした言葉をそのまま引用し、根拠にした発言を必ず併記する
- メモにないことは補わない。推測した部分は「推測」と明示する
- 希望ごとに、達成を確認する方法(何を見れば分かるか)を1つ添える
- 「足腰を元気にしたい」のような身体機能の希望しか見つからない場合は、
  本人に確認すべき問い(なぜそれが嬉しいのか)を提案する
- 該当する発言が見つからない場合は「見つからない」と答える

音声メモの文字起こし
(ここに貼る)

根拠になった発言を必ず併記させるのが肝です。AIは、それらしい希望を作ることがあります。引用元を出させておけば、捏造かどうかがその場で分かります。計画書の目標で本人の言葉を作ってしまうのは、運営指導以前の問題です。

氏名、生年月日、住所、事業所名は外してから貼ってください。どこまで入れてよいかの線引きは医療・介護で生成AIを使うルール5つに整理しています。

目的と目標を分けて書く

拾えたら、書きます。分けるのは3つです。

  • 目的:本人の言葉をそのまま使う(買い物に行きたい)
  • 長期目標:その目的が実現している生活の場面(週1回、近所のスーパーへ妻と買い物に行く)
  • 短期目標:そのために必要な身体機能。回数・距離・場所・相手のどれかを入れて、確認できる形にする(屋外を連続300m、休憩1回で歩ける)

運動機能をなくすわけではありません。目標の位置から、目的のための手段の位置へ下げるだけです。

書いた目標をご家族へ説明するときは、専門用語のままだと届きません。「立位保持の耐久性」のような言葉を生活の場面に置き換える手順は、専門用語を家族に伝わる言葉へ言い換える方法にまとめています。

リハビリテーション計画書の目標の記入例

一般的な記入例を並べると、こうなります。実在の利用者さんの計画書ではありません。

本人の最初の言葉一段掘った目的長期目標短期目標
足腰を元気にしたい買い物に行きたい週1回、近所のスーパーへ妻と買い物に行く屋外を連続300m、休憩1回で歩ける
転びたくない友達の家に遊びに行きたい月2回、三軒先の友人宅を一人で訪ねる屋外の段差を手すりなしで昇降する
手が動くようにしたい孫に写真を送りたい孫の写真を撮って家族に送るペットボトルのふたを右手で開ける
体力をつけたい旅行に行きたい日帰りの旅行に家族と参加する連続30分の座位を保てる

整理そのものもAIに下書きさせられます。

あなたは通所リハビリテーションを担当する理学療法士です。
次の「本人の言葉」をもとに、リハビリテーション計画書の目標案を
3つ出してください。

構成
- 目的:本人の言葉をそのまま使う
- 長期目標(6か月):その目的が実現している生活の場面
- 短期目標(3か月):そのために必要な身体機能。回数・距離・場所・相手の
  いずれかを入れて、達成を確認できる形にする

条件
- 身体機能の向上は目標ではなく「目的のための手段」として短期側に置く
- 本人が言っていない希望は創作しない。情報が足りない部分は
  「本人に確認すること」として別にまとめる

本人の言葉
(ここに貼る)

わかっている情報
(住まいの構造/同居家族/通所以外の外出 など)

出てきた案をそのまま貼る前に、3つ確認してください。

  • 本人が言っていない言葉が混ざっていないか。根拠の発言と照らし合わせる
  • 短期目標が測れる形になっているか。回数・距離・場所・相手のどれかが入っているか
  • リハビリテーション会議で達成度を確認する段取りがあるか

3つ目は、さきほどの資料の別のページが根拠です。リハビリテーション会議で目標の達成度と取り組みの効果を確認しているのは、約半数でした。測れない目標は、確認もされないまま次の3か月に進みます。目標を書き換えるなら、確認の仕組みもセットで考えたほうがいいと思います。

生活行為向上リハビリテーション実施加算は、取りに行くものではない

最後に、加算の話をします。

生活行為向上リハビリテーション実施加算の算定率は、通所リハビリテーションで1.6%です。同じ資料に、算定が難しい理由として「対象者がいない」「研修を修了している職員がいない」が挙げられています。

私の事業所は、この加算を算定しています。ただ、加算を取るために何かを始めたわけではありません。

機能訓練をどう組むかではなく、自宅での生活をどう上げていくか。そこを見据えて関わっていくと、自然と算定できる形になっていきます。順番が逆なんです。加算の要件に合わせて目標を書くのではなく、生活を見て目標を立てた結果、要件を満たす。

要件のハードルは、低くはありません。ただ、利用者さん側の目標が明確であればあるほど、ハードルは下がっていきます。ここまで書いてきた「なんでそれが嬉しいのか」を掘る作業が、そのまま効いてきます。

事業者側のハードルは、そこまで高くないと感じています。ただし現場の業務量に左右されます。人が足りない時期に新しいことを始めるのは、やはり難しい。

令和9年度改定の論点として、国は「算定率が低い加算についてどのように考えるか」を挙げています。整理される可能性はありますが、何も決まっていません。令和6年度改定では運動器機能向上加算が基本報酬に包括化されました。運動機能の訓練が「やって当たり前」の位置へ動いた、とは言えると思います。

まとめ

リハビリテーション計画書の目標について、整理します。

  1. 国のデータでは、目標の約7割が運動機能。ADL改善は約30%、IADL改善は約20%
  2. 一方で6か月後にIADLが改善したのは約36%。書いていないことが現場では起きている
  3. 原因は語彙力ではなく、質問が一つ足りないこと。「なんでそれがなると嬉しいのか」を聞く
  4. 聞けた言葉は音声メモで残し、AIには根拠の発言つきで拾わせる。作らせない
  5. 目的(本人の言葉)・長期目標(生活の場面)・短期目標(測れる身体機能)に分けて書く

分科会の資料は誰でも読めます。まずは自分の事業所の計画書を何枚か開いて、目標欄が身体機能で止まっていないか見てみてください。止まっていたら、次に会ったときに一言だけ足せば済みます。

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