目次
介護記録の音声入力を現場で試し続けている理学療法士、室長てつです。
結論を先に書きます。
介護記録や会議は、音声入力と文字起こしAIで確実に楽になります。全部をいきなり専用ツールに置き換えなくても、「録音 → 文字起こし → AIで要約」の型なら今日から試せます。
この記事で使うもの:
- 録音:スマホ、またはAIボイスレコーダー(私はNotta Memoを使いました)
- 文字起こし・要約:Notta、Gemini Notebook(旧NotebookLM) など
- 介護記録・ケアプラン専用にするなら:ハナスト、ワイズマン、ミルモレコーダー ほか(後半で紹介します)
先に漫画でざっと流れを見たい方は、まんが『「異常」あり!?』をどうぞ。
現場管理職として、まず自分の部署内ミーティングの議事録で試したところから、介護の記録・会議・ケアプランのどこに効くかを整理してお伝えします。まずは「なぜ介護の現場ほど効くのか」から。
なぜ介護の現場ほど効くのか
介護の仕事は、記録に取られる時間が大きい仕事です。日々の介護記録、申し送り、カンファレンスの議事録、ケアプランの文案。どれも「頭では分かっているのに、文章にする手間」がボトルネックになります。
音声入力・文字起こしAIが効くのは、まさにこの「話せば済む内容を、わざわざ手で打っている」部分です。声で残して、AIに整えてもらう。これだけで、記録に向かう時間をまとめて削れます。
- 介護の記録業務は「考える時間」より「文字にする時間」が長い
- 音声入力は、その「文字にする時間」を丸ごと肩代わりする
- 専用ツールを入れる前に、手元のスマホと汎用AIで型は試せる
使いどころは3つ
介護の現場で音声入力・文字起こしAIが使えるのは、大きく3か所です。
- ①会議・カンファレンスの議事録 ── まずここが一番始めやすい
- ②日々の介護記録・申し送り ── 介護ソフト連携の専用ツールが向く
- ③ケアプランの文案づくり ── 課題・目標のたたき台をAIに出させる
このうち、私が実際にやったのは①のカンファ議事録です。そこから順番に書いていきます。
3つのどれから手を付けるか迷うときは、音声入力を現場で動かす実践メモに、始める順番を3ステップで整理しています。
実際にやったこと:部署内ミーティングの議事録を音声で
私がいま試しているのは、通所リハの部署内ミーティングの議事録づくりです。会議のたびに議事録を起こす手間が、地味に重かったからです。
介護のベンダーが出している音声入力・文字起こしツールも検討はしました。ただ、専用ツールはコストがそれなりにかかり、「まず試す」には少しハードルが高い。そこで、2万円ほどで手に入るNotta(Notta Memo)から始めました。ソフト側は無料プランやスタータープランでも十分に試せるので、専用の記録システムを入れなくても、「声を文字にする」ところはこの価格帯から始められます。
やっていることは単純です。
- ミーティング中はNottaで録音するだけ(メモは取らず会話に集中)
- 終わったら録音を文字起こし。話した内容がそのまま文字データになる
- その文字起こしをGemini Notebookに渡して、決定事項と次のアクションの形に要約させる
- 要約を目で確認して、固有名詞と数値だけ直して完成
要約のときに使っているプロンプトは、こんなシンプルな形です。そのままコピーして使えます。
以下はミーティングの文字起こしです。これを議事録にまとめてください。
- 会議の目的
- 検討したこと
- 決定事項
- 次のアクション(担当と期限がわかれば併記)
専門用語や利用者名などの固有名詞は、勝手に変えず そのまま残してください。
次の語は文脈から正しいほうを選び、判断できない箇所は [要確認] と付けてください。
(例:移乗/異常、バン〔車〕/BAN)
会議中に議事録係がメモを取り続ける時間が、まるごと減りました。録音さえ回しておけば、あとは文字起こしと要約がAI側で進みます。まずは「声を文字にする」という一点を、職場に取り入れている段階です。
要約は「7割の下書き」と考えるのが安全です。決定事項・利用者名・日付・数値は、必ず自分の目で確認して直します。ここを飛ばすと、あとで事実がずれます。
議事録づくりそのもののコツは、Gemini Notebookで議事録を作る全手順に詳しくまとめています。会議の記録を楽にしたい人は、こちらもあわせてどうぞ。
介護記録・ケアプランの音声入力で使うなら
ここからは、私自身がまだ日常業務で使っているわけではなく、「コストの見通しが立てば、次に検討したい」ツールの紹介です。実体験ではないので、選ぶときの目安として読んでください。
日々の介護記録や申し送りまで音声化するなら、使っている介護ソフトとの連携が肝心です。記録した内容がそのまま請求やケア記録につながるので、単体の文字起こしより「介護ソフト連携型」が向きます。
- 介護記録・音声入力:ハナスト、ワイズマン音声記録AI、ミルモレコーダー、ほのぼのNEXT音声入力 など
- ケアプランの文案づくり:AIケアプラン、SOIN、ミルモぷらん など(課題・目標のたたき台を生成)
これらの専用ツールは精度も連携も強い一方、費用は上がります。だからこそ順番として、まずは低コストのツールで「声を文字にする」効果を職場で確かめ、続ける価値があると分かってから専用ツールに投資する、という進め方が現実的だと考えています。私自身も、コストの見通しが立てば音声入力の本格導入に進みたいと思っています。
低コストで試す段階なら、スマホの音声入力アプリを足すだけでも書類づくりまで進みます。スマホのAquaVoice(iPhone・Android両対応)で話した内容をClaudeでWordファイルにした流れは、AquaVoiceとClaudeで職場の案内文を作る手順で紹介しています。
ツールごとの規模・用途別の比較は、医療介護の音声入力ツール比較にまとめています。専用ツールまで検討する段階なら、こちらで全体像を見てください。
専用ツールを入れる前にできる使い方もあります。通所リハなら、利用者さんから聞いた言葉を自分の音声メモで残し、AIに目標の候補を拾わせる方法です。手順とプロンプトはリハビリテーション計画書の目標|活動・参加をAIで拾うにまとめています。
看護記録の音声入力は「カルテに入れる前」で使う
看護記録についても、上と同じく実体験ではなく一般的な整理です。看護記録は電子カルテへ直接入力する施設が多く、スマホの音声入力やNottaの文字起こしをそのままカルテに流し込める環境は限られます。だから、音声入力の出番はカルテに入れる前です。巡回中や処置の直後に、患者さんの言葉や観察した内容を声でメモに残し、落ち着いてからカルテに清書する。SOAPのS(患者さんの訴え)は、その場の言い回しを声で残しておくと後から書きやすくなります。
カルテに直接入れるところまで音声化したいなら、医療辞書と電子カルテ連携を持つ医療専用ツール(AmiVoiceなど)の領域です。介護ソフト連携型と同じく費用は上がるので、まずは「メモ用の音声入力」で効果を確かめてから検討する順番をおすすめします。患者さんの情報を含むメモは、次の節の注意点を先に読んでください。
精度と誤認識への備え──方言より同音異義語が危ない
介護の音声入力でよく心配されるのが、誤認識です。褥瘡・嚥下・拘縮といった専門用語や、利用者の名前、数値。ここがずれると記録として使えません。
方言:訛りでは崩れない。気をつけるのは「方言の言葉」
まず方言の話から。私は山口で働いていますが、方言が原因で崩れたという記憶がありません。 訛りは、思っていたほど問題になりませんでした。AmiVoice Ex7のような専用ツールも、事前の音声登録なしでイントネーションや訛りによらず認識する設計だと公式に説明されています。
ただし、訛り(イントネーション)と、方言の言葉そのものは分けて考えたほうがいいです。たとえば西日本では「えらい」を「しんどい・疲れた」の意味で使います。音声入力は「えらい」という音は拾えても、漢字にすると多くは「偉い」になります。文字としては間違っていないのに、記録を読む人には意味が伝わりません。
職員が記録を吹き込むときは標準語に寄せて話すことが多いので、ここはあまり問題になりません。気をつけたいのは、利用者さんの言葉をそのまま残したいとき。「えらい(しんどい)」のように、意味を添えて残すのが確実です。
同音異義語:意味が通るまま化ける
崩れたのは別のところでした。同音異義語です。しかも、声が聞き取りにくいときに起きます。
- 「移乗」が「異常」になる
- 車のミニバンを指す「バン」が「BAN」になる
移乗と異常は、どちらも介護記録に普通に出てくる言葉です。「移乗時に」が「異常時に」に変わっても、文章としては成立してしまいます。明らかな文字化けなら読み返せば気づきますが、意味の通る別の語に化けると見落とします。
ノイズ:音量よりマイクとの距離
同音異義語は、声が聞き取りにくいときに起きやすくなります。食事どきのフロアや、テレビのついた談話室では、マイクは周りの声や物音も一緒に拾います。
大きな声で話すより、マイクを口に近づけるほうが効きます。スマホを口元に寄せる、イヤホンマイクを使う、吹き込みはスタッフルームなど静かな場所に移ってからにする。どれも費用はかかりません。
誤認識率の数字は、どう見ればいいか
ツールの紹介には「認識率○%」と書かれていることがあります。ただ、その数字は提供元が用意した条件で測ったものです。自分の声・自施設の用語・現場の雑音でも同じになるとは限りません。
つまり精度は「何パーセント当たるか」より、外したときに気づけるかで見たほうが実務的です。同音異義語は認識率の数字には表れにくく、それでいて記録の意味を変えてしまいます。
現場で効くのは、次の3つです。
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導入前に自分の声でテストする デモや無料枠で、実際の申し送りに近い内容を話して試す。カタログの認識率より、自分の声と自施設の用語で確かめたほうが確実です。
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用語集と「間違えやすい語」をAIに渡す 汎用ツールでも、要約させる段階で渡せば表記は揃えられます。「移乗/異常」のように紛らわしい組み合わせを書いておくと化けにくくなります。先ほどのプロンプトに1行足すだけです。
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固有名詞は最初から入れない 利用者名・職員名は誤変換の温床であるうえ、個人情報の観点でも入れないほうが安全です。「利用者A」「担当者B」で録音し、必要なら後から差し替える運用が結局は速くなります。あわせて、利用者名・薬剤名・数値は要約後に必ず目で確認して直します。
なお、誤認識をゼロにする前提で導入すると、たいてい失敗します。手で直す時間を含めても手書きより速いか、という比べ方が現実的です。
専門用語の辞書を持つ介護専用ツールなら、汎用より誤変換は減ります。ただ「まず汎用で型を作り、量が増えたら専用へ」という順番が現実的です。ツールごとの辞書の有無・価格・連携条件は、医療介護の音声入力ツール比較にまとめています。
一つだけ注意:利用者の情報の扱い
音声入力を使ううえで、いちばん大事な注意点です。利用者の個人情報を含む録音・文字データを、どのツールに、どこまで預けるか。ここは施設のルールとして先に決めておく必要があります。
無料ツールの中には、入力内容がAIの学習に使われるものもあります。介護記録のような個人情報は、学習に使われない設定・契約になっているかを必ず確認してください。この線引きは、医療介護現場でAIを使うときのルールに詳しくまとめています。
まとめ
- 介護の記録・会議は「録音 → 文字起こし → AI要約」で楽になる
- まずは会議の議事録から。2万円ほどのNottaとGemini Notebookで気軽に試せる
- 日々の記録・ケアプランは、コストが取れる規模なら介護ソフト連携の専用ツールへ
- 看護記録は電子カルテ直接入力の制約があるので、音声はカルテに入れる前のメモ・下書きに使う
- 誤認識対策は「専用辞書+目視の最終確認」
- 個人情報は、学習に使われないツールか先に確認する