医療介護の管理職こそAIを使いこなせる。毎日の指示出しが活きる理由
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医療介護の管理職こそAIを使いこなせる。毎日の指示出しが活きる理由


目次
    1. ―1)考えの整理にも使える。目標の壁打ち
    2. ―2)人に残る仕事
    1. ―1)時間がかかったまま、気づかない
    2. ―2)部下がAIで作った資料を、素通りしてしまう
    1. ―1)1. 間接業務の棚卸し
    2. ―2)2. 年次目標の壁打ち(3つの立場から)
    3. ―3)3. 部下がAIで作った資料の確認

管理職を十数年続けている、理学療法士の室長てつです。

AIは若い人の方が得意。管理職の自分には関係ない。今のやり方で回っているし、特に困ってもいない。そう感じている人に向けて書きます。

先に答えから。

  • 今のAIは指示で動く。毎日指示を出している管理職ほど、使いこなせる
  • 管理職の仕事は、会議・書類・目標・手順づくり。文章と段取りが中心で、AIと相性がいい
  • 使っていない管理職が困っていないのは、できることを知らないだけ。AIを使う世代の部下が来たら、資料の不具合を見抜けない側に回る

僕は理学療法士(PT)で、管理職になって十数年。会議と書類が増え、パソコンを覚えないと仕事が回らない時期もありました。今は議事録・手順書・目標の壁打ちにAIを使い、職場ではリハの部署内と上長向けに勉強会も開いてきた。その経験から、管理職ほどAIを使いこなせる理由と、使わないままだと何が起きるかを書きます。

この記事で使うもの。

  1. AIアプリ(ChatGPT・Gemini・Claudeのどれか。無料版で試せる)
  2. 自分の1週間の予定(手帳かカレンダー)
  3. この記事のプロンプト3本

まずは、管理職になって仕事がどう変わるかから。

管理職になると、仕事の中身が変わる

管理職になって増えたのは、利用者さんの前ではなく、机の上でする仕事でした。

  1. 会議。会議が増えれば、報告と書類も増える
  2. 部署の方向性と、年次目標づくり
  3. 数字の管理。最初は甘く見ていたが、ここ数年はかなり意識して向き合っている
  4. 業務手順づくり。抜け漏れのない手順を整え、全員ができる形で伝え、直していく
  5. 組織の中での役割や、制度がらみの仕事

もう一つ、パソコン作業。管理するには、パソコンが使えないと始まらない。正直、覚えるまでは手間でした。

並べてみると、どれも「書く・まとめる・考えを整理する・数字を扱う」仕事。ここがAIの一番得意なところです。

間接業務は、AIと相性がいい

管理職の間接業務は、AIに下書きを任せられるものが多い。僕が置き換えた例です。

業務前今
委員会の議事録メモから起こして、合間の時間で3日がかり録音してGemini Notebook(旧NotebookLM)へ。手直しまで10分
PC操作の手順書スクリーンショットを撮って貼って、半日作業しながら3分しゃべって録音。10分で図入りの手順書
部署の方向性・目標一人で考えるAIに案をぶつけて、複数の立場から意見をもらう

議事録の手順はGemini Notebookで議事録を作る全手順、手順書は新人スタッフ向け手順書をAIで作る方法に、プロンプトごと載せています。

考えの整理にも使える。目標の壁打ち

文書づくりだけではありません。部署の方向性や年次目標を決めるとき、僕はAIに案をぶつけて意見をもらっています。

自分の考えだけで決めると、どうしても偏る。経営側から見たらどうか、現場のスタッフから見たらどうか。立場を変えた意見がすぐ返ってくるのが便利です。

使い方はプログラミングのような難しいものではなく、相談相手。プロンプトは後半に載せます。

人に残る仕事

逆に、AIに任せていない仕事もはっきりしています。

  1. 個人情報が絡む記録と、その読み込み
  2. 面談や評価など、職員と向き合う仕事
  3. 利用者さん・患者さんへの対応

AIに任せるのは机の上の仕事。人と向き合う時間は人に残す。この線引きがあるから、安心して使えます。どこまで入れてよいかは医療・介護で生成AIを使うルール5つで整理しました。

使っていない管理職は「困っていない」

周りの管理職仲間で、AIを使っていない人は困っていません。

理由は単純で、できることを知らないから。今のやり方が当たり前になっていて、もっと早く終わる方法があることに気づいていない。困っていないから、探しもしない。僕にも覚えがあります。

誤解のないように書くと、医療の知識や技術では、僕より上の管理職は本当に多い。差があるのは能力ではなく、情報です。AIで何ができるかを一度知れば、使い始める人は多いはず。

ただ、「困っていない」のままでいられる時間は、そう長くないと思っています。

新人は「あると便利」、管理職は「知らないと困る」

現場の職員にとって、AIはあると便利な道具。管理職にとっては、知らないと困る知識になります。理由は2つ。

時間がかかったまま、気づかない

間接業務に時間がかかっていることに、気づかないまま続く。すぐ終わる方法があっても、知らなければ選べません。3日かかる議事録は、来月も3日かかる。

部下がAIで作った資料を、素通りしてしまう

こちらの方が大きい。AIを使うのが当たり前の世代が、これから現場に入ってきます。今いる職員も、少しずつ使い始めている。部下が作る資料や発表の下書きにAIが入るのは、時間の問題です。

そのとき、AIがどう動くのかを知らない管理職は、不具合に気づかないまま通してしまう。AIで作った文書には、出やすい不具合があります。

AIで作った資料に出やすい不具合

  1. もっともらしいが、根拠のない数字や制度の説明
  2. 実在を確かめていない文献や出典
  3. 現場の実態と合わない、一般論の手順
  4. 入れてはいけない情報(個人情報・施設の内部情報)を入れて作った可能性

知っていれば、どこを見ればいいか分かる。知らなければ、見た目の整った資料ほどそのまま通ります。制度や数字の確かめ方は制度リサーチは「検算」が9割にまとめました。

時間は無駄にかかったまま。部下の使い方にも追いつけない。管理職がAIを知らないままだと、この2つが同時に起きます。

指示を出す人ほど、AIを使いこなせる

ここからは前向きな話。管理職は、AIを使いこなすのに有利な位置にいます。

今のAIは、指示で動く仕組みです。そして管理職は、毎日指示を出している。部下に仕事を頼むときに伝えることと、AIに伝えることは、ほぼ同じです。

伝えること部下への指示AIへの指示
目的何のための仕事か何のための文書か
背景部署の事情、これまでの経緯自分の立場、読む人
条件期限、守ってほしいこと文字数、入れてほしい項目
形どんな形で出してほしいか表か箇条書きか、何案ほしいか

部下に「いい感じにやっておいて」と頼んで、いい結果が返ってこないのと同じ。AIも、目的と条件と形を伝えるほど精度が上がります。

しかも、部下なら職場の事情を察してくれることもありますが、AIは察してくれません。書いていないことは、書いていないまま進む。だからこそ、伝えることを整理して頼むのに慣れている人が強い。

たとえば、勉強会の案内文。

勉強会の案内文を作って。

これだと、どこの職場でも使える無難な文章が返ってきます。部下に頼むときのように伝えると、こうなります。

職場の勉強会の案内文を作ってください。
目的:AIを触ったことがない職員に、まず1回参加してもらうこと
読む人:リハビリ職と介護職。パソコンが苦手な人も多い
条件:A4で半分以内。専門用語は使わない。参加は自由と明記する
形:タイトル、日時・場所・持ち物の箇条書き、ひとこと、の順
案は2つ。1つはやわらかめ、1つは簡潔に。

日頃の指示出しが、そのままAIへの指示になる。現場で人に仕事を頼んできた年数は、AIを使ううえで強みになります。

組織のためで、自分のためでもある

AIを覚えて一番得をしたのは、たぶん自分です。

  1. 細かなパソコン作業と書類づくりが、すぐ終わるようになった
  2. 印刷や出力、数字の管理にかかる手間も小さくなった
  3. 職場で「ITツールが得意な人」として頼られるようになった

3つ目は、自分でも想定していなかったことです。上の立場の人のちょっとした困りごとを解決したり、院内の取り組みの手伝いを頼まれたり。後から聞いた話ですが、一定の評価にもつながっているようです。

部署の効率化のために始めたことが、自分の仕事の幅も広げてくれました。

職員研修は、外に頼むか自前か

部署でAIを広げるとき、迷うのが職員研修。結論から書くと、組織としての方向性が決まるまでは、自前の勉強会で十分。組織として本格的に導入すると決めたら、外部の研修を検討する段階です。

僕自身、自前の勉強会は何回か開いてきました。リハの部署内で、上長向けに、そして上の立場の人にも現場の様子を話しています。外部の研修は、まだ使っていません。組織としての方向性が固まっていない段階では、検討まで行かないのが正直なところです。

自前の勉強会外部の研修
費用ほぼかからない(準備の時間だけ)有料。法人なら助成金の対象になる場合あり
中身自分の職場の業務に合わせられる体系的で、情報が新しい
教える人職場でAIを使っている人外部の専門家
向く段階興味を持つ人を増やしたい段階組織として導入を決めた後
情報の更新教える人が自分で追い続ける研修会社が教材を更新する
弱点教える人に負担が集まる。教える人がいないと始まらない自分の職場の業務とずれることがある

自前で始めるなら、いきなり全員ではなく、使う人を少しずつ増やすのがコツ。進め方はチームでAIを使い始める3ステップに書きました。

外部の研修を選ぶときは、費用の一部を助成金でまかなえる場合があります。ただし、使い方に順番があります。

助成金を使うなら、申し込む前に確認すること

  1. 法人が職員に受けさせる研修なら、厚生労働省の人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)の対象になる場合がある。中小の法人で経費の75%
  2. 業務として命じる研修であること。研修を始める日の6か月前から1か月前までに、計画届を出す
  3. 2026年8月3日から、職種を問わない汎用的な内容は対象外。厚労省の例では「汎用的なプロンプトの作り方を学ぶ研修」は対象外、「生成AIで商品提案書の構成案を作る営業担当者向けの研修」は対象
  4. 受講は1人1年度3回まで。そのうちeラーニングは1回まで
  5. 医療介護の職員向けの研修がどう判断されるかは、管轄の労働局に事前に相談するのが確実

厚労省の例を読む限り、「AIの基本」だけを学ぶ研修は対象になりにくい。外部の研修でも、中身を自分の職場の業務に寄せる必要があります。

個人で受ける場合の給付制度との違いは、生成AIスクールに補助金は使えるか、自分が対象か5分で確かめる手順で整理しています。

コピペで使えるプロンプト3本

どれもChatGPT・Gemini・Claudeのどれでも使えます。利用者さんの情報や職員の個人名は入れないでください。

1. 間接業務の棚卸し

まず、自分の仕事のどこにAIが使えるかを洗い出します。手帳やカレンダーを見ながら、1週間の業務を書き出して貼ってください。

あなたは医療介護の現場をよく知る、業務改善の相談役です。
私は[病院のリハビリ科/介護施設]の管理職です。
下に、私の1週間の業務を書き出します。
各業務を次の3つに分けて、表にしてください。
A:AIに下書きを任せられる(文章づくり・まとめ・案出し)
B:AIで一部を手伝える(集計・確認・整理)
C:人がやる(個人情報を扱う、人と向き合う)
表の列は「業務」「分類」「AIに頼むなら最初に何を頼むか」の3つ。
最後に、Aの中から最初に試すとよい業務を1つ選び、理由を2行で書いてください。

【私の1週間の業務】
・(例)月曜:部署会議1時間、その後に議事録
・(ここに書き出す)

棚卸しした業務を異動で後任に渡すときの整理は、異動の引き継ぎをAIで作る方法で手順にしています。

2. 年次目標の壁打ち(3つの立場から)

目標の案を、立場の違う3人に見てもらうイメージです。

私は[部署名]の管理職です。来年度の部署目標の案を考えています。
次の案について、3つの立場から意見をください。
1. 法人の経営側(収支や稼働率を気にする立場)
2. 現場のスタッフ(業務の負担とやりがいを気にする立場)
3. 利用者さんとご家族(サービスの質を気にする立場)
それぞれ「賛成できる点」「心配な点」「こう変えるとよくなる点」を3行ずつ書いてください。
最後に、3つの立場をふまえた修正案を1つ出してください。
数字の根拠が必要な箇所は、私が確認すべきデータとして挙げてください。

【目標案】
(ここに案を書く。施設名や個人名は入れない)

3. 部下がAIで作った資料の確認

前半で書いた「出やすい不具合」を、AIに先に拾わせます。

次の文書は、職員がAIを使って作った[勉強会資料/報告書]の下書きです。
管理職として確認するときに、見るべき箇所を挙げてください。
1. 根拠が書かれていない数字や制度の説明
2. 出典がない、または実在を確かめるべき文献
3. 医療介護の現場の実態と合わない可能性がある記述
4. 個人情報や施設の内部情報が含まれていないか
それぞれ該当箇所を引用し、「確認の仕方」を1行で添えてください。
問題がない項目は「該当なし」と書いてください。

【文書】
(ここに貼る。個人名と利用者さんの情報は伏せてから)

AIのチェックも完璧ではありません。見る場所を絞るための道具として使い、最後は自分の目で確かめてください。

まとめ

  • 今のAIは指示で動く。指示を出してきた管理職ほど、使いこなせる
  • 管理職の間接業務は、会議・書類・目標・手順づくり。AIの得意な仕事ばかり
  • 使っていない管理職が困っていないのは、できることを知らないだけ
  • AIを使う世代の部下が来たら、知らない管理職は資料の不具合を素通りする側に回る
  • 職員研修は、方向性が決まるまでは自前の勉強会。導入を決めたら外部研修と助成金を検討

今日の一歩は、手帳を開いて今週の業務を書き出し、プロンプト1に貼ること。どこからAIを使えばいいかが見えてきます。

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参考・出典(2026年10月時点で確認)

  1. 厚生労働省「人材開発支援助成金」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/d01-1.html
  2. 厚生労働省「人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)詳細版」(令和8年8月3日版) https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/001731978.pdf
  3. 厚生労働省「人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)改正 令和8年8月3日からの変更点について」 https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/001731966.pdf