目次
管理職を十数年続けている、理学療法士の室長てつです。
AIは若い人の方が得意。管理職の自分には関係ない。今のやり方で回っているし、特に困ってもいない。そう感じている人に向けて書きます。
先に答えから。
- 今のAIは指示で動く。毎日指示を出している管理職ほど、使いこなせる
- 管理職の仕事は、会議・書類・目標・手順づくり。文章と段取りが中心で、AIと相性がいい
- 使っていない管理職が困っていないのは、できることを知らないだけ。AIを使う世代の部下が来たら、資料の不具合を見抜けない側に回る
僕は理学療法士(PT)で、管理職になって十数年。会議と書類が増え、パソコンを覚えないと仕事が回らない時期もありました。今は議事録・手順書・目標の壁打ちにAIを使い、職場ではリハの部署内と上長向けに勉強会も開いてきた。その経験から、管理職ほどAIを使いこなせる理由と、使わないままだと何が起きるかを書きます。
この記事で使うもの。
- AIアプリ(ChatGPT・Gemini・Claudeのどれか。無料版で試せる)
- 自分の1週間の予定(手帳かカレンダー)
- この記事のプロンプト3本
まずは、管理職になって仕事がどう変わるかから。
管理職になると、仕事の中身が変わる
管理職になって増えたのは、利用者さんの前ではなく、机の上でする仕事でした。
- 会議。会議が増えれば、報告と書類も増える
- 部署の方向性と、年次目標づくり
- 数字の管理。最初は甘く見ていたが、ここ数年はかなり意識して向き合っている
- 業務手順づくり。抜け漏れのない手順を整え、全員ができる形で伝え、直していく
- 組織の中での役割や、制度がらみの仕事
もう一つ、パソコン作業。管理するには、パソコンが使えないと始まらない。正直、覚えるまでは手間でした。
並べてみると、どれも「書く・まとめる・考えを整理する・数字を扱う」仕事。ここがAIの一番得意なところです。
間接業務は、AIと相性がいい
管理職の間接業務は、AIに下書きを任せられるものが多い。僕が置き換えた例です。
| 業務 | 前 | 今 |
|---|---|---|
| 委員会の議事録 | メモから起こして、合間の時間で3日がかり | 録音してGemini Notebook(旧NotebookLM)へ。手直しまで10分 |
| PC操作の手順書 | スクリーンショットを撮って貼って、半日 | 作業しながら3分しゃべって録音。10分で図入りの手順書 |
| 部署の方向性・目標 | 一人で考える | AIに案をぶつけて、複数の立場から意見をもらう |
議事録の手順はGemini Notebookで議事録を作る全手順、手順書は新人スタッフ向け手順書をAIで作る方法に、プロンプトごと載せています。
考えの整理にも使える。目標の壁打ち
文書づくりだけではありません。部署の方向性や年次目標を決めるとき、僕はAIに案をぶつけて意見をもらっています。
自分の考えだけで決めると、どうしても偏る。経営側から見たらどうか、現場のスタッフから見たらどうか。立場を変えた意見がすぐ返ってくるのが便利です。
使い方はプログラミングのような難しいものではなく、相談相手。プロンプトは後半に載せます。
人に残る仕事
逆に、AIに任せていない仕事もはっきりしています。
- 個人情報が絡む記録と、その読み込み
- 面談や評価など、職員と向き合う仕事
- 利用者さん・患者さんへの対応
AIに任せるのは机の上の仕事。人と向き合う時間は人に残す。この線引きがあるから、安心して使えます。どこまで入れてよいかは医療・介護で生成AIを使うルール5つで整理しました。
使っていない管理職は「困っていない」
周りの管理職仲間で、AIを使っていない人は困っていません。
理由は単純で、できることを知らないから。今のやり方が当たり前になっていて、もっと早く終わる方法があることに気づいていない。困っていないから、探しもしない。僕にも覚えがあります。
誤解のないように書くと、医療の知識や技術では、僕より上の管理職は本当に多い。差があるのは能力ではなく、情報です。AIで何ができるかを一度知れば、使い始める人は多いはず。
ただ、「困っていない」のままでいられる時間は、そう長くないと思っています。
新人は「あると便利」、管理職は「知らないと困る」
現場の職員にとって、AIはあると便利な道具。管理職にとっては、知らないと困る知識になります。理由は2つ。
時間がかかったまま、気づかない
間接業務に時間がかかっていることに、気づかないまま続く。すぐ終わる方法があっても、知らなければ選べません。3日かかる議事録は、来月も3日かかる。
部下がAIで作った資料を、素通りしてしまう
こちらの方が大きい。AIを使うのが当たり前の世代が、これから現場に入ってきます。今いる職員も、少しずつ使い始めている。部下が作る資料や発表の下書きにAIが入るのは、時間の問題です。
そのとき、AIがどう動くのかを知らない管理職は、不具合に気づかないまま通してしまう。AIで作った文書には、出やすい不具合があります。
AIで作った資料に出やすい不具合
- もっともらしいが、根拠のない数字や制度の説明
- 実在を確かめていない文献や出典
- 現場の実態と合わない、一般論の手順
- 入れてはいけない情報(個人情報・施設の内部情報)を入れて作った可能性
知っていれば、どこを見ればいいか分かる。知らなければ、見た目の整った資料ほどそのまま通ります。制度や数字の確かめ方は制度リサーチは「検算」が9割にまとめました。
時間は無駄にかかったまま。部下の使い方にも追いつけない。管理職がAIを知らないままだと、この2つが同時に起きます。
指示を出す人ほど、AIを使いこなせる
ここからは前向きな話。管理職は、AIを使いこなすのに有利な位置にいます。
今のAIは、指示で動く仕組みです。そして管理職は、毎日指示を出している。部下に仕事を頼むときに伝えることと、AIに伝えることは、ほぼ同じです。
| 伝えること | 部下への指示 | AIへの指示 |
|---|---|---|
| 目的 | 何のための仕事か | 何のための文書か |
| 背景 | 部署の事情、これまでの経緯 | 自分の立場、読む人 |
| 条件 | 期限、守ってほしいこと | 文字数、入れてほしい項目 |
| 形 | どんな形で出してほしいか | 表か箇条書きか、何案ほしいか |
部下に「いい感じにやっておいて」と頼んで、いい結果が返ってこないのと同じ。AIも、目的と条件と形を伝えるほど精度が上がります。
しかも、部下なら職場の事情を察してくれることもありますが、AIは察してくれません。書いていないことは、書いていないまま進む。だからこそ、伝えることを整理して頼むのに慣れている人が強い。
たとえば、勉強会の案内文。
勉強会の案内文を作って。
これだと、どこの職場でも使える無難な文章が返ってきます。部下に頼むときのように伝えると、こうなります。
職場の勉強会の案内文を作ってください。
目的:AIを触ったことがない職員に、まず1回参加してもらうこと
読む人:リハビリ職と介護職。パソコンが苦手な人も多い
条件:A4で半分以内。専門用語は使わない。参加は自由と明記する
形:タイトル、日時・場所・持ち物の箇条書き、ひとこと、の順
案は2つ。1つはやわらかめ、1つは簡潔に。
日頃の指示出しが、そのままAIへの指示になる。現場で人に仕事を頼んできた年数は、AIを使ううえで強みになります。
組織のためで、自分のためでもある
AIを覚えて一番得をしたのは、たぶん自分です。
- 細かなパソコン作業と書類づくりが、すぐ終わるようになった
- 印刷や出力、数字の管理にかかる手間も小さくなった
- 職場で「ITツールが得意な人」として頼られるようになった
3つ目は、自分でも想定していなかったことです。上の立場の人のちょっとした困りごとを解決したり、院内の取り組みの手伝いを頼まれたり。後から聞いた話ですが、一定の評価にもつながっているようです。
部署の効率化のために始めたことが、自分の仕事の幅も広げてくれました。
職員研修は、外に頼むか自前か
部署でAIを広げるとき、迷うのが職員研修。結論から書くと、組織としての方向性が決まるまでは、自前の勉強会で十分。組織として本格的に導入すると決めたら、外部の研修を検討する段階です。
僕自身、自前の勉強会は何回か開いてきました。リハの部署内で、上長向けに、そして上の立場の人にも現場の様子を話しています。外部の研修は、まだ使っていません。組織としての方向性が固まっていない段階では、検討まで行かないのが正直なところです。
| 自前の勉強会 | 外部の研修 | |
|---|---|---|
| 費用 | ほぼかからない(準備の時間だけ) | 有料。法人なら助成金の対象になる場合あり |
| 中身 | 自分の職場の業務に合わせられる | 体系的で、情報が新しい |
| 教える人 | 職場でAIを使っている人 | 外部の専門家 |
| 向く段階 | 興味を持つ人を増やしたい段階 | 組織として導入を決めた後 |
| 情報の更新 | 教える人が自分で追い続ける | 研修会社が教材を更新する |
| 弱点 | 教える人に負担が集まる。教える人がいないと始まらない | 自分の職場の業務とずれることがある |
自前で始めるなら、いきなり全員ではなく、使う人を少しずつ増やすのがコツ。進め方はチームでAIを使い始める3ステップに書きました。
外部の研修を選ぶときは、費用の一部を助成金でまかなえる場合があります。ただし、使い方に順番があります。
助成金を使うなら、申し込む前に確認すること
- 法人が職員に受けさせる研修なら、厚生労働省の人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)の対象になる場合がある。中小の法人で経費の75%
- 業務として命じる研修であること。研修を始める日の6か月前から1か月前までに、計画届を出す
- 2026年8月3日から、職種を問わない汎用的な内容は対象外。厚労省の例では「汎用的なプロンプトの作り方を学ぶ研修」は対象外、「生成AIで商品提案書の構成案を作る営業担当者向けの研修」は対象
- 受講は1人1年度3回まで。そのうちeラーニングは1回まで
- 医療介護の職員向けの研修がどう判断されるかは、管轄の労働局に事前に相談するのが確実
厚労省の例を読む限り、「AIの基本」だけを学ぶ研修は対象になりにくい。外部の研修でも、中身を自分の職場の業務に寄せる必要があります。
個人で受ける場合の給付制度との違いは、生成AIスクールに補助金は使えるか、自分が対象か5分で確かめる手順で整理しています。
コピペで使えるプロンプト3本
どれもChatGPT・Gemini・Claudeのどれでも使えます。利用者さんの情報や職員の個人名は入れないでください。
1. 間接業務の棚卸し
まず、自分の仕事のどこにAIが使えるかを洗い出します。手帳やカレンダーを見ながら、1週間の業務を書き出して貼ってください。
あなたは医療介護の現場をよく知る、業務改善の相談役です。
私は[病院のリハビリ科/介護施設]の管理職です。
下に、私の1週間の業務を書き出します。
各業務を次の3つに分けて、表にしてください。
A:AIに下書きを任せられる(文章づくり・まとめ・案出し)
B:AIで一部を手伝える(集計・確認・整理)
C:人がやる(個人情報を扱う、人と向き合う)
表の列は「業務」「分類」「AIに頼むなら最初に何を頼むか」の3つ。
最後に、Aの中から最初に試すとよい業務を1つ選び、理由を2行で書いてください。
【私の1週間の業務】
・(例)月曜:部署会議1時間、その後に議事録
・(ここに書き出す)
棚卸しした業務を異動で後任に渡すときの整理は、異動の引き継ぎをAIで作る方法で手順にしています。
2. 年次目標の壁打ち(3つの立場から)
目標の案を、立場の違う3人に見てもらうイメージです。
私は[部署名]の管理職です。来年度の部署目標の案を考えています。
次の案について、3つの立場から意見をください。
1. 法人の経営側(収支や稼働率を気にする立場)
2. 現場のスタッフ(業務の負担とやりがいを気にする立場)
3. 利用者さんとご家族(サービスの質を気にする立場)
それぞれ「賛成できる点」「心配な点」「こう変えるとよくなる点」を3行ずつ書いてください。
最後に、3つの立場をふまえた修正案を1つ出してください。
数字の根拠が必要な箇所は、私が確認すべきデータとして挙げてください。
【目標案】
(ここに案を書く。施設名や個人名は入れない)
3. 部下がAIで作った資料の確認
前半で書いた「出やすい不具合」を、AIに先に拾わせます。
次の文書は、職員がAIを使って作った[勉強会資料/報告書]の下書きです。
管理職として確認するときに、見るべき箇所を挙げてください。
1. 根拠が書かれていない数字や制度の説明
2. 出典がない、または実在を確かめるべき文献
3. 医療介護の現場の実態と合わない可能性がある記述
4. 個人情報や施設の内部情報が含まれていないか
それぞれ該当箇所を引用し、「確認の仕方」を1行で添えてください。
問題がない項目は「該当なし」と書いてください。
【文書】
(ここに貼る。個人名と利用者さんの情報は伏せてから)
AIのチェックも完璧ではありません。見る場所を絞るための道具として使い、最後は自分の目で確かめてください。
まとめ
- 今のAIは指示で動く。指示を出してきた管理職ほど、使いこなせる
- 管理職の間接業務は、会議・書類・目標・手順づくり。AIの得意な仕事ばかり
- 使っていない管理職が困っていないのは、できることを知らないだけ
- AIを使う世代の部下が来たら、知らない管理職は資料の不具合を素通りする側に回る
- 職員研修は、方向性が決まるまでは自前の勉強会。導入を決めたら外部研修と助成金を検討
今日の一歩は、手帳を開いて今週の業務を書き出し、プロンプト1に貼ること。どこからAIを使えばいいかが見えてきます。
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参考・出典(2026年10月時点で確認)
- 厚生労働省「人材開発支援助成金」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/d01-1.html
- 厚生労働省「人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)詳細版」(令和8年8月3日版) https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/001731978.pdf
- 厚生労働省「人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)改正 令和8年8月3日からの変更点について」 https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/001731966.pdf